こぶとり物語−子宮筋腫、私の場合 2
患者番号93864

 

  子宮ガンの検査は子宮の入り口や中の組織を、ガリガリと削り取って調べる。これが非常に痛い。内診台に上るだけでも緊張するのに「力抜いて下さい」と言われても難しい。

 初めての時は泣き出してしまった。若い男性医師にはこの痛みなどわかるはずもない。看護婦さんが「もうちょっとだからね、頑張って。もう終わり、はい終わり。偉い偉い」と足をさすってくれた。まるで子供だ。

 診察室を出ると、私の「イッターイ!」という泣き声が聞こえたのか、他の患者たちの視線が辛かった。

 私は子供の頃から病院・医者が嫌いだ。体重測定とか、健康診断、検便、検尿、お尻にセロファンを貼るギョウ虫検査も憂鬱だった。

 「素敵な男の先生だと内診台も全然平気、冷たい女の医者より安心できるものよ」という人もいたが、私には全く理解できない。

 子宮ガン検査の結果は 99年9月「VA(少し心配)」、12月「異形成(ほぼ心配無し)」だった。子宮筋腫は緊急を要することではないので翌年まで様子を見ることになった。

 2000年3月、久しぶりに訪れた病院は診察室の仕切がカーテンからドアに変わっていた。これで他の患者や付き添いの人に話を聞かれる心配はなくなった。内診台も新しくなっていた。自分で上って足を広げて座るものから、座るとグイーンと腰が持ち上がって太股が開く電動式に。色もピンクで抵抗感が軽減した。

 それでも子宮ガン検査の痛さは変わらない。今回は特別な検査なのか下手くそなのか知らないが「筋腫でよく見えません」等と言われるし、出血が1週間も続く。おまけに断りもなく写真を撮られた。大変不快。

 だいたい筋腫は子宮の奥の方に出来ているのに、なぜ子宮の入り口が見えにくくなるのか?担当医師に聞いてみた。子宮の本来の大きさは拳ほどもない。それを10pの筋腫によって押し上げているような状態になっているらしい。

 そう言われてみれば、タンポンが真っ直ぐ入らないのも、おしっこが斜めに出るのも、お腹がぽっこり出ているのも、全部筋腫のせいではないかと思うようになった。深刻な生理痛や大量の出血、貧血という悪さはしないが、ひどく邪魔な存在。

  結局私は「筋腫のせいでうまく組織がとれない」という失礼な(と私は感じた)一言で手術を決意した。

 手術に向けてホルモン治療(月に一度リュープリンを注射)を始めた。生理を止めて、手術までに筋腫を小さくして、手術中の出血を少なくするためだ。これは強い薬らしいが、私には大きな副作用はなかった。

 問題は金額だ。リュープリン1回分は、納豆のパックに入っている醤油ぐらいの量なのに8千円もする。たったそれだけで生理を止めてしまうのも驚きだが。

  手術の日程はなかなか決まらなかった。このころになるとだんだんわかってきた。病院は医者も看護婦もとても忙しい。注射、検査、診察予約を忘れられるのはしょっちゅうだ。患者も注意深く念を押さないとえらい目に遭う。遠慮して意向を伝えないでいると、後回しにされてしまう。

 

 4回目の子宮ガン検査は、私があまり痛がるからだろうか「無理やり組織をとるのは止めました」。結果は異常なし。

 9月になっても入院の日が決まらない。「前日連絡します」というのだ。実際は連休前の14日に連絡があって、18日月曜日が生まれて初めての入院日となった。2日前、髪を金色に染めた。

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(2001.2)