部長、それはセクハラです
シモーヌ・オノ

 その女性は、飲み会帰りに部長にタクシーで送ってもらうつもりが、「もう一軒行こう」と誘われてホテルのバーに行った。部長は「遊びじゃなくて付き合ってほしい」と言う。「「君を○○担当にしたのは僕の近くにいてもらうためだ。」などと言って口説く。

 女性は「そのつもりはありません」と断ったが、そういう対象として見られていたことがショックだったと言う。自分に落ち度があったのではと悩んだらしい。暫くしてまた食事に誘われて同じことになり、2回断って以降誘われなくなった。ところがどうやらその部長はお目当てを変えて同じ行為を繰り返しているようなのだ。

 こんな相談を受けたらあなたはどうするだろう?個人的な人間関係の問題だと考えるだろうか。キッパリ断って被害もなかったから良かった、と言うだろうか。2人きりでバーに行ったり、2回も懲りずに誘いにのったのは軽率だとその女性を責める人もいるだろう。

 部長にとってはちょっとしたゲームかアバンチュールのつもりなのかもしれない。しかしこれは明らかにセクシャルハラスメントである。セクハラはいじめと同じで、される方ではなく、する方が悪いのである。部長は職務上の地位を利用して関係を迫ったわけだし、女性は不快な思いをしている。女性は誘いを断ったことで被るかもしれない不利益に怯えて仕事を続けなければならない。部長が職場環境を悪化させたのだ。

 アンケートでセクハラを無くすための対策として1位にあげられるのは「女性自身が毅然と対応する」である。しかしセクハラを受けたときの対応としてほぼ半数を占めるのは「無視した」続いて「それとなく嫌だと意思表示をした」となっている。セクハラを無視するのは得策ではない。無視されたものはさらにエスカレートするか、報復に出るという普遍的な法則がある。それとなくでは伝わらないことの方が多い。やはりはっきりNOと言ったり具体的な行動をとるのが一番なのだ。

 それはわかっていても、セクハラは力関係の中で起こるので我慢してしまったり、誰にも相談できない状況になりやすい。だから会社や組合に相談・教育の窓口が是非とも必要だ。相談者を絶対に守り、指摘に対して改善できるシステムを持たなければならない。

 今もしも性的関係を強要されたりしつこく誘われて嫌な思いをしている人があれば言いたい。1.悪いのはあなたではない。2.そういうことは周りに人がいないときに起こりがちなので具体的な記録・証拠を取っておくこと。3.人に話すことは大事。セクハラをする人は公になることを避けたいはず。「破廉恥な人だ」と皆に知らせれば第2、第3の被害者が防げる。勇気を出してほしい。
(1996.9)