査定Dの衝撃
シモーヌ・オノ

 夏のボーナスが去年の額より少ない。はて、組合ニュースに前年度マイナスになったとはなかったはず。給与規定と賞与支給基準の表を見て計算すると、基準支給額のマイナス4%。つまり査定がD。何度計算しても結果は同じ。前回のボーナスは査定B2だったので+2%からマイナス4%へ6%減ということなのか?

 これは大変なことではないか。私の存在及び仕事は基準額を支給するのに値しない、という会社の評価だ。

 査定Cは±0%なので「普通」と思っている人が多いが、「不満がある」という評価である。多少の不満はあるのが自然、それが普通とも考えられる。しかし、マイナス4%にするからには、明らかに問題があり、会社に損害を与えている事実があるのではないか。

 考えてみるに、このところ仕事で上司に叱責されたこともないし、厳重な注意をされた記憶もない。私にとっては、いきなりのマイナス評価である。一度身嗜みのことで注意を受けたが、反抗、抗議したわけでもない。まさかそれがDの理由ではないだろう。とにかく問題点を明らかにして、改めるところは改めないと、このままずっとDでは困る。

 先ずは直接上司に尋ねてみる。現上司は今回の査定にはノータッチというが、いくつかの疑問に答えてくれる。

 「前任者の評価はCだった。」「査定は総合点数によって決まるが、相対評価だろう。」「役員が加点することもあるし、人事が調整することもある。そういう要素がいろいろあってDになったのではないか。」その後上司が人事に確認してくれたところ、査定は相対ではなく「絶対評価」だとわかった。

 そうか。前上司の評価がCならば、Dになった理由を人事に聞いてみよう。そこで明らかになったのは、評価Cは4月の昇給時のもので、今回のボーナス査定は人事で調整する前の段階でDだったこと。

 ところで現上司も査定をする立場。それにしては相対評価なのか絶対評価なのかも知らなくて、昇給時の評価とボーナス査定を混同したり、その程度の認識でよいのかと不安になる。

 さて、人事の説明は以下の通り。

 「査定を見せることはできないが、所見には『チームワークの点で問題がある』という記述があった。査定は能力、実績、態度という項目を点数で評価して、合計点数によって決まる。J(ジュニア)層では実績よりも能力、態度が重視される。君は態度の点数が低かった。思い当たることがあったら、気を付ければいいのでは。」はたして私が会社に損害を与えるほど、基準額を支払えないほどチームワークを乱したのだろうかとも思うが、評価はそれとして謙虚に受け止めよう。

 しかし今回の評価は、今後にどう影響するのだろう。これがずっと尾を引くのだろうか。次の査定はマイナススタートになるのか?人事の説明では、毎回ゼロからスタートするとのことだ。が、昇格にはどう関係するのか聞き忘れてしまった。

 ある会社では査定でSが無い人、Dがある人は昇進できないという規定があるらしい。しかし当社には査定Sの人はいないという噂も聞いた。実際SやDの人はどれぐらいいるのだろうか。「Dっていうのはよっぽどのことだ」と言われると気になる。

 私は自分としては、仕事は普通にやってきたつもりだ。しかし評価者にはそう見えない、ということだろうから、今回の評価が間違っているとは思わない。今まで評価についてそれほど深く気にしたことはなかった。が、マイナスというのは大打撃だ。「辞めさせたいのか」とも考えた。しかし私はこの会社でこれからも、自分なりに責任を持って、そして楽しく働きたい、と思っている。

 今回の件はショックだが、わかったこと、考えたこと、得たものは多い。人事考課のからくりが少しわかった。Dでなければ気にしないから知らないままだろう。

 この件の前に雑談で「査定の時期というのは重要なポイントではないか。一つの仕事を終えた前と後では評価が違うだろうし、異動の時期によっても変わるだろう」と言ったら「それは違う。そんなことでは変わらない、ちゃんと見てくれているはず。日々の努力が大事だ」という声があった。

 しかし一連の話を聞くと、やはり評価は生身の人間のすることだし、誰が、何時査定するのかによって大きく変わるようだ。

 現在、会社は新人事制度を前に期待と不安が入り乱れ、情報と噂と思惑が溢れている。改革後は、毎回査定を巡って、私がしたような面接をするようになるのか?これはしんどいけど面白いではないか。いきなりマイナスされて、尋ねなければなんの説明も指導もない、という「評価のしっぱなし」はなくなるのだから。新人事制度の先取りをした気分にさえなる。

 内申書が開示され、入試の成績を本人に通知する動きも出始めた今、皆様にも自分の評価を詳しく認識し、率直に語り合うことをお勧めします。
(1995.9)