循環系の病気
犬心臓糸状虫症(犬心臓糸状虫成虫の駆除)
犬心臓糸状虫症(フィラリア症)は、現在、日本の多くの
地域で非常によくみられます。
この病気は、犬心臓糸状虫によって引き起こされます。
この寄生虫は、犬の心臓の右側の室
(右心房および右心室)とその近くにある大きな血管
(肺動脈)に寄生します。
犬心臓糸状虫の雌からは
非常に多くの微小な仔虫(ミクロフィラリア)が産まれ、
このミクロフィラリアが犬の血液とともに体内を循環します。
犬心臓糸状虫に感染した犬を刺した蚊は、
このミクロフィラリアを血液と一緒に吸い取ります。
蚊の体内で10〜14日を過ごしたミクロフィラリアは、
蚊によって運ばれて別の犬に感染します。
蚊が血を吸うときに犬の皮膚にはミクロフィラリアが付着し、
ミクロフィラリアは蚊の刺傷から犬の体内に入ります。
ミクロフィラリアは最終的には心臓にたどり着き、
そこで心臓糸状虫の成虫になります。
成虫は3ヶ月以内に新しいミクロフィラリアを産みます。
犬心臓糸状虫に感染している蚊に刺されてから、
犬の体内で次の世代のミクロフィラリアが産みだされる
までは、少なくとも190日程かかります。
犬心臓糸状虫症のほとんどのケースでは、血液中に
発見されるミクロフィラリアによって診断できます。
ただし、なかにはミクロフィラリアが血液中にまったく
みられない場合(潜伏感染)もあります。
この場合には、血液検査と胸部X線写真の両方を使って
診断が行われます。
犬心臓糸状虫症を治療しないでおくと、
心不全や重大な肝臓・腎臓疾患(あるいは、
これらすべて)になる可能性があります。
犬心臓糸状虫症をそのままにしておくと、
通常は死に至ります。
犬心臓糸状虫症(ミクロフィラリアの駆除)
これまでは犬心臓糸状虫の成虫を駆除するための
治療をしてきましたが、これからはあなたのペットの
血液中にいる仔虫(ミクロフィラリア)を駆除して、
他の犬に対する感染源にならないように処置します。
ミクロフィラリアの駆除は、薬を使って行います。
治療期間が過ぎた後に、犬の血を採って検査します。
そのときにまだミクロフィラリアがみつかるようであれば、
血液の中にミクロフィラリアが完全にいなくなるまで治療
を繰り返します。
ミクロフィラリアが完全に駆除されたことを獣医師が
確認したら、以後はペットが再び感染しないように
するために、フィラリア予防の時期になりましたら
予防薬を飲ませるようにしてください。
犬心臓糸状虫症(予防)
犬心臓糸状虫症(フィラリア症)の予防には非常に
効果の高い薬があります。蚊の防除も予防上ある
程度効果がありますが、これだけでは予防としては
不十分です。
予防薬:
1.ジエチルカルバマジン:この薬は、犬心臓糸状虫症の
予防薬として長い間利用されてきたもので、
その効力も証明されています。
この薬剤は、液体、錠剤(糖衣錠または
裸のまま)、ビスケットなどの形で提供されて
います。この薬の投与は、蚊が出始める
時期の30日前ぐらいから毎日行い、
蚊がいなくなった後でも60日間は投与を
続けます。この薬は、犬心臓糸状虫症の
予防の他に回虫の腸内感染も防ぎます。
また、犬心臓糸状虫、回虫および鉤虫などに
よる感染を予防するために、
他の薬と一緒にジエチルカルバマジンが
使われることもあります。
2.イベルメクチン(アイバーメクチン):
この薬は、最近になって犬心臓糸状虫感染の
治療薬として認可されたもので、錠剤または
液体の形で提供されます。
この薬の主な利点は、毎月1回の投与で
すむことです。
この薬の場合、認可されている投与量では、
回虫やその他の寄生虫の予防にはなりません。
この薬は、薬を投与する以前の30日間に体内に
入ったミクロフィラリアんい対して効き目がある
ので、最初に蚊が出てきた時期の30日後から
投与を始め、蚊がいなくなる時期を過ぎて30日
以内に最後の投与を行うようにします。
3. 1年中蚊がいるような地域では、犬心臓糸状虫に
よる感染を防ぐ投薬をやはり1年を通して行う
必要があります。
犬の拡張型心筋症
拡張型心筋症は、3歳以上の大型犬によくみられます。
この病気は、心臓の筋肉が弱くなるために起こるもので、
その結果心臓が大きくなり(拡張)、血液を送り出す力が
弱くなります。
拡張型心筋症が起こる原因は、おそらく感染やその他の
原因によって心臓の筋肉に重大な障害が生じるためでは
ないかと考えられています。
拡張型心筋症は、他の病気、
(とくに胃拡張/胃捻転症候群)に関連して起こることも
あります。拡張型心筋症は、最終的には心不全を引き
起こすことになります。
欝血性心不全
慢性の欝血性心不全は、身体が必要とする正常な
量の血液を心臓が送り出せないような心臓病です。
欝血性心不全になったペットは、
肺を通る血流が少なくなるので、疲れやすく、
呼吸も速くなり、深い咳をするようになります。
また、体重が減って実際には痩せてきますが、
腹部には体液がたまるため大きくふくらんできます。
脚も腫れ上がって、ぶよぶよしてきます。
この病気にかかっているペットは、
興奮したり動き回ったりすると意識を失ったり虚脱状態に
なることがあります。
舌の色も青みがかった灰色になります。
欝血性心不全は、心臓の弁の疾患、
犬心臓糸状虫(フィラリア)感染あるいは出生時に
存在する心臓の奇形などが原因で起こることもあります。
欝血性心不全は完治させることはできませんが、
適切な内科療法を行うことによって、
特に支障なく通常の生活を送ることもできます。
心不整脈
心不整脈とは、心臓の鼓動の速度やリズムに異常が
起こることを言います。心不整脈にはさまざまな種類
があり、その症状もごく軽いものから生命を脅かすもの
までいろいろあります。
不整脈のケースでは、原因が判らない場合が
ほとんどです。
心内膜炎
心内膜炎は、心臓を内張りしている膜または心臓の弁
(あるいは、その両方)に炎症が起こることです。
通常、このような炎症は、身体の他の部位(たとえば、
歯、扁桃腺、肛門腺、腎臓など)に起きた感染が原因
で起こります。この感染が、血液の流れによって心臓
へともたらされます。
心内膜炎は深刻な病気で、これにかかったペットは
死ぬこともあります。この病気では血栓ができることも
あり、そうなると、ただでさえ深刻な病状がさらに悪化
します。
心嚢炎/心嚢水
心嚢は、心臓を取り巻いている薄い袋です。
心嚢は、心臓を支えたり保護する働きをします。
正常な状態の心嚢には、ごく少量の体液しか入って
いません。
心嚢炎は、この袋が炎症を起こすことです。
心嚢水は、心臓の中の液体の量が大幅に増えた
ものです。
心嚢水がたまると、心臓が圧迫されて、血液を送り
出すポンプの働きが弱くなります。
心嚢炎にかかった後には、心嚢水がたまることが
よくあります。
心嚢の病気の原因としては、心不全、腫瘍、心臓
または心嚢の外傷、細菌の毒素または、感染、
ウイルス感染、血液が固まろうする正常な働きを
阻害する病気などがあります。
自己免疫性血小板減少症
ペットが動物として生まれつき持っている体内の
防御システムは、健康を保つ上で欠かせない
ものです。
この防御システムの一部は、病気の原因となる
微生物を破壊する抗体を作ります。
自己免疫性血小板減少症にかかると、この防御
システムは、その動物自身の血小板(血液を固まら
せるために必要な細胞成分)を攻撃するような抗体
を作り出してしまいます。
その結果、体のいろいろな部分で出血が起こります。
何故このような自己破壊的な抗体が作られるのかは、
完全には解明されていません。このような抗体の生産が、
感染や腫瘍が引き金となって起こる場合もあり
多くの場合、原因はつきとめられていません。
自己免疫性溶血性貧血
病気や怪我に対して動物が抵抗力を持っているのは、
免疫システムが働いているからです。
動物が持つこの防御システムは、病原体(たとえば
細菌やウイルスなど)を破壊する助けとなる抗体の
生産を調節します。
自己免疫性溶血性貧血では、この防御システムが
狂ってしまい、その動物自身の体、特に赤血球に
攻撃を加えるようになってしまいます。
その結果、生命を危うくするほどの深刻な貧血を
引き起こします。こうした免疫システムの障害は、
感染や癌やその他の病気によって起こることも
ありますが、多くの場合は原因が判りません。
薬物に対する特定の反応の結果、
自己免疫性溶血性貧血が起こる場合もあります。
生まれたての動物の場合は、母親が与える最初
の母乳(初乳)中にある抗体が原因となってこの
病気にかかることもあります。
大動脈弁狭窄症
大動脈弁狭窄症は、先天性の(生まれつきの)心臓の
欠陥で、ジャーマン・シェパード、ニューファウンドランド、
ボクサーなどの犬種に一番よくみられます。
この病気になると大動脈(心臓から血液を送り出す
大きな動脈)の内側が狭くなるため、身体の他の部分
に血液を送り出す役目をする心臓は、そのポンプの
動きを速く強く行われなければならなくなります。
このような、無理な働きが心不全を引き起こします。
大動脈弁狭窄症にかかっている子犬のなかには、
一見するとまったく健康に見えるものもいます。
また、疲れやすいもの、発育不全になるもの、
よく失神するものなどもいます。
生後6ヶ月まら18ヶ月位で突然死亡することが
あります。狭窄症がそれほどひどくない犬の場合は、
心不全にならず何年も長生きすることがあります。
ただし、いったん心不全の症状が現れると、正常な
寿命をまっとうすることはほとんど期待できません。
大動脈弁狭窄症の診断には、X線写真、心電図、
血管造影法、心エコー超音波心臓検査法などが
よく使われます。
動脈管開存
子宮内で発育する胎子は、血液と酸素を混ぜるのに
自分の肺は使わず、その代わりに酸素を多く含んだ
血液を胎盤循環によって母親から受け取ります。
胎子の体に入った血液のほとんどは、肺を通らずに
迂回している血管(動脈管)によって体の他の部分
に送られます。肺には、ほんのわずかの量の血液
しか送られません。
動脈管は、出生後数時間のうちに閉じていくのが
普通です。一部の動物では、生後に動脈管が
閉じないため、血液が依然として肺を迂回してしまい、
酸素を吸収できなくなります。人間の新生児にこの
欠陥が起きている場合は、「青色児」と呼ばれます。
この欠陥が起きやすいのは、プードル、コリー、
ポメラニアン、シェットランド・シープドッグなどの犬種
です。この病気にかかっている子犬の多くは、心不全を
起こして生後数週間のうちに死亡しますが、生後
8週間を無事に過ぎた場合は成犬になるまで生き
延びる例が多いようです。肺を迂回する動脈管の
小さい場合には、特に悪い影響が何も現れずに
通常の生活を送ることができます。
猫の動脈血栓症
動脈血栓症は、猫の心臓および血液にみられる
障害です。この病気は、心臓の欠陥のある猫に
起きる危険な合併症の一つです。
血液の塊は心臓の中で作られ血流によって移動
します。
動脈の血管はだんだん細くなり毛細血管へと移行
して行きますが、血管が血液の塊より細くなると
その場所に詰まります。血液の塊がよくつまる
場所は、体の後方に向かう部分で後肢に血液を
供給する動脈が枝分かれするところです。
血栓がたまると、(血栓の位置によって)後肢の
片方または両方への血液の流れが大幅に少なく
なります。動脈血栓症でよくみられる症状としては、
後肢がうごきにくくなったり、痛んだり、その部分
の体温が低くなったりします。
猫の肥大型心筋症
肥大型心筋症は、猫の心臓の筋肉が異常に厚くなる
(肥大)ことです。この病気が1つの原因から起こるのか
あるいはいくつもの要因が作用して起こるのかはわかっ
ていません。
心臓の筋肉が厚くなると、心臓の中に血液を送り込んだ
り、血液を送り出したりする機能が弱まり、心臓の鼓動
のリズムも狂ってきます。その結果、呼吸困難になったり
肺に水がたまったり、血栓ができたり、死に至ったりしま
す。病状が軽い場合、初期の段階の症状としては嗜眠
(深い眠りに似た長期にわたる無意識状態)と食欲減退
ぐらいしか現れないこともあります。
この病気は、雄雌や年齢を問わずどのような猫でもかか
る可能性がありますが、特に中年期の雄猫に一番よく
みられます。
肺動脈弁狭窄症
肺動脈弁狭窄症とは、肺動脈、肺動脈弁あるいは弁に
隣り合っている心臓の部分などが狭くなったり、部分的
に閉塞してしまうため、心臓の右側から肺への血液の
流れに障害が起きることです。このようになると肺に届く
血液の量が少なくなるので、心臓は、新鮮な酸素を肺で
呼吸するのに十分な量の血液を供給するために、血液
を送り出す力を強くしなければなりません。肺動脈などが
極端に狭くなっているときは、心臓自体が十分な酸素を
受け取ることができなくなるため、心不全になる可能性
もあります。
若い犬の場合は、肺動脈弁狭窄症になっても一見した
ところは健康そうに見えますが、年をとるに連れて、
呼吸困難になったり、運動をするとすぐに疲れたり、意識
を失ったりするようになります。病状が悪化するに連れて
心不全の徴候(たとえば、腹部や肢が腫れ上がるなど)
が出始めます。また、呼吸困難、衰弱、失神などといった
症状もそれまでよりももっとはっきり現れるようになります。
肺動脈弁狭窄症になると、3歳になる前に心不全になる
のが普通ですが、狭窄症の程度が軽い場合は、正常な
寿命を保つ犬もいます。
弁閉鎖不全症
心臓の弁は、一方向にだけ開いて、血液が心臓から外の
方向にだけ流れるようにするものです。心臓の弁が閉ま
らないと(つまり、弁閉鎖不全症になると)、一度心臓から
流れ出た血液がまた心臓の中に戻ってきてしまいます。
この病気は、出生時にすでに存在する(先天性)場合もあ
りますし、生まれた後にかかった病気が原因でなることも
あります。
弁閉鎖不全症は、心臓の右側または左側のいずれか、
あるいはその両方に起こります。心臓の左側にこの障害
が起こると、呼吸困難、咳き込み、体力の減退などの
症状が現れます。心臓の右側に怒った場合は、食欲減退
体重の低下、腹部が次第に膨らむ、ときおり吐いたり下痢
をする、四肢が腫れ上がるなどの症状がみられます。
心臓の両側に障害が起きることも少なくありません。
右大動脈弓遺残
発育中の胎子は、正常であれば出生前に消失していまう
ような大動脈をいくつか持っています。こうした血管の一部
が生後も残っていると、気管と食道(胃への通路)が繊維質
のリングの中に閉じ込められてしまい、空気や食物が正常に
流れることができなくなります。
右大動脈弓遺残がみられる子犬や子猫は、食べることは
正常にできますが、うまく呑み下すことができず、食べたあと
間もなくして未消化の食物を吐き戻してしまい、息切れする
ようになります。そのため、同じ腹から産まれた兄弟達に
比べて成長の速度も遅くなります。こうした症状が現れる
時期は、通常、離乳直後の固形食を食べ始める頃です。

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