腫瘍
悪性リンパ腫
悪性リンパ腫は、リンパ系に生じる癌の一種です。
血液の中を流れるリンパ球が癌化したり、
あるいは、リンパ節(リンパ腺)またはその他のリンパ組織
(たとえば、脾臓、消化器系、骨髄など)に生じることもあります。
また、腫瘍が1つまたは1群のリンパ節から拡がらないこと
もありますし、逆に身体の他の部位にどんどん転移していく
こともあります。この病気は進行性の病気で、
個々の動物によって進行の速度は異なりますが最終的には
死に至ります。摘出が必要な腫瘍の場合には手術で取り除く
こともありますが、化学療法(抗癌剤による治療)を行うのが
最も効果的な治療法です。治療の目的は、病気の進行を抑えて、
できるだけ副作用を起こさずに延命させることです。
犬の乳腺腫瘍
乳腺腫瘍は、雌犬で最も多くみられる腫瘍で、
悪性(癌性)と良性の両方があります。
このような腫瘍がなぜできるのかはまだよく判っていませんが、
腫瘍の形成と増殖速度にはホルモンが関係していることは
知られています。乳腺腫瘍の治療には、手術、化学療法
(抗癌剤による治療)などが使われます。
どの治療法を使うかは、腫瘍の種類および転移の範囲
によって異なります。
インスリノーマ
インスリノーマは、犬や猫の膵臓にできるまれな腫瘍です。
この腫瘍からは大量のインスリンが分泌され、
その結果、血糖(グルコース)の量が異常に少なくなります。
血糖の値が低くなると脳の活動が急速に異常をきたし、
さらに協調運動不能(身体の各部分の動きをうまく合わせられず、
ばらばらな動きしかできないこと)、衰弱、虚脱状態、
筋肉のひきつり、視力喪失、沈うつ状態、極度の空腹感、
発作などが起きます。この腫瘍ができる原因はまだ判っていません。
可移植性性器肉腫
可移植性性器肉腫は、雄犬と雌犬のどちらにも起こります。
この肉腫(悪性腫瘍)ができる場合は、
雄犬の場合は陰茎や陰茎をおおう皮膚で、
雌犬の場合は外陰部または膣またはその両方です。
また、雄犬および雌犬の顔や脚にできることもあります。
できる腫瘍の数は、1つのときもありますし、
いくつかできることもあります。
この腫瘍は、性交時の接触やなめたり咬んだりすることに
よってうつります。犬を放さないこと、他の犬が近づかない
ようにすることが重要です。この病気で最もよくみられる症状は、
性器からの出血あるいは一目でわかる組織の増殖です。
性器肉腫のなかには、治療をしないのに消えてなくなって
しまうものもあります。
眼瞼腫瘍
眼瞼腫瘍は、まぶたにできる腫瘍です。
現在のところ原因はよく判っていません。
炎症によって偽腫瘍(真性の腫瘍によく似ている非腫瘍性
の腫れ物)ができることもあります。
腫瘍は、一般に良性と悪性(癌性)の2つに分けられます。
ほとんどの眼瞼腫瘍は良性です。
ただし、ちょっと見ただけでは良性と悪性の区別はつけにくいので、
組織のサンプルをとり、専門家に診てもらう必要があります。
まぶたの内側にこの腫瘍ができると腫瘍部分が眼球にこすれて、
眼の痛みや傷を生じることがあります。
腫瘍が外に剥き出しになって、その部分が感染することもあります。
また、涙腺の近くに腫瘍ができると、涙が出なくなることもあります。
眼瞼腫瘍はすべて手術で取り除く必要があります。
眼瞼腫瘍は非常に大きくなることもあり、ひどい場合には、
腫瘍を完全に取り除くためにまぶたの組織のかなりの部分を
切り取らければならないこともあります。
そのようなケースでは、まぶたの正常な機能を維持するために
整形手術を行ってまぶたを復元しなければなりません。
できるだけ早期の段階で腫瘍を取り除いておけば、
こうした大掛かりな手術をしなくて済むだけでなく、
ペットが危険にさらされる可能性も少なくなります。
口内乳頭腫症(いぼ)
口内乳頭腫症は、ウイルスにようって口または舌、唇、まぶた、
鼻(あるいはその両方)に「いぼ」ができたり組織の増殖が起こる
伝染性の病気です。組織の増殖は、ウイルスに感染してから
1ヶ月後くらいに現れれ始めます。
この病気に最もかかりやすいのは、4歳未満の犬です。
「いぼ」は桃色がかった白色をしており、
あまり大きくならないのがふつうです。
ただし、いくつもの「いぼ」が集中してできたりカリフラワー
のようになることはあります。一般にこれらの「いぼ」は、
大きくなりすぎたり、できる場所が悪かったために食事や
呼吸に困難をきたさない限り、動物の健康に悪影響を与える
ことはありません。この病気は普通は再発しませんし、
一度この病気にかかって回復した動物には免疫ができます。
肛門周囲腺腫
肛門周囲腺腫は、肛門付近にいくつもある小さな分泌腺にできます。
肛門周囲腺腫は、8歳以上の雄犬にできる腫瘍のうちで最も
よくみられる腫瘍の1つです。それよりも若い犬にできることも
まれにあります。この腫瘍が雌にできることはほとんどありません。
この腫瘍ができると、肛門の近くの皮膚の下または尾の内側
にしこりができるのですぐにわかります。
腫瘍が1つだけでない、いくつもできることもあります。
腫瘍部分の皮が破れて、出血することもよくあります。
転移したり腫瘍がどんどん深くなっていくような悪性のものも
まれにあります。
骨腫瘍
骨腫瘍は、癌性でない(良性)場合と癌性(悪性)の場合が
あります。良性腫瘍は、身体の他の部位に転移しないもので、
どちらかといえば危険性の少ない腫瘍です。
一方、悪性(癌性)腫瘍は転移する可能性があり、
非常に危険性の高い腫瘍です。骨腫瘍のほとんどは癌性で、
通常は痛みを伴います。
この痛みを和らげ、治療を成功させるためには、
手術をするかどうか、早く決断をする必要があります。
脂肪腫/脂肪肉腫(脂肪の腫瘍)
脂肪細胞は、ほかのすべての体細胞の場合と同じように、
異常増殖して腫瘍を形成することがあります。
ただし、このような腫瘍がなぜできるのかはまだ判っていません。
脂肪腫:
脂肪腫は、脂肪に生じる良性(非癌性)の腫瘍です。
一般に脂肪腫は皮膚の下にできる丸みを帯びた
なめらかな塊で、移動性があり、成長もあまりはやくは
進みません。この腫瘍は、年をとった肥満の雌によくみられます。
比較的害は少ないと考えられていますが、
脂肪腫を発見したときはそのままにしておかず、
手術を考えてみるほうがよいでしょう。
腫瘍が小さいときのほうが、手術で取り出しやすいからです。
また、腫瘍の内部に血管の病気が発生している場合は、
手術が困難になります。脂肪腫のなかには、
悪性の腫瘍と区別しにくいものもあります。
脂肪肉腫:
脂肪肉腫は、脂肪に生じる悪性の腫瘍で、
他の組織を破壊する傾向があります。
脂肪肉腫がある場合は、手術で取り除いて他の組織への
転移を防ぐ必要があります。
腫瘍(新生物)
新生物とは、「新たに形成される」ものという意味で、
一般には腫瘍と呼んでいます。必ずしもすべての腫瘍が
健康にとって深刻な問題を引き起こすとは限りません。
腫瘍の患者を診察するときにわれわれ獣医師が行うことの
1つは、その腫瘍が非癌性(良性)か癌性(悪性)を調べる
ことです。腫瘍の原因の一部はすでに判っていますが、
まだまだ判らないことがたくさんあります。
腫瘍の原因になると判っているものとしては、ウイルス、
寄生虫、照射(太陽光線、X線)、ホルモン、遺伝的な
疾病素質(ある病気にかかりやすいこと)、一部の化学物質
などがあります。良性(非癌性)の腫瘍は身体の他の部位
には転移しないので、危険性が少ないといえます。
悪性(癌性)の腫瘍は転移する可能性があり、
非常に危険な腫瘍です。組織のサンプル(生検材料)の
顕微鏡検査を行うことによって、腫瘍が悪性か良性かを
調べることができます。(これは一般に大学などの専門医
が行います。)治療に入る前のペットの病状を調べるために、
身体検査、X線検査、臨床検査などを行うこともあります。
セルトリ細胞腫
セルトリ細胞腫は、5歳以上の雄犬にみられるのが、
一般的ですが、まれに若い犬にもみられる良性の腫瘍です。
この腫瘍は、陰嚢内に降りてきていない睾丸にできるのが
普通です。ただし、陰嚢内に収まっている睾丸に腫瘍が
できることもあります。セルトリ細胞腫は、体の他の部位
には転移しないのが普通です。正常な睾丸の収容の
約15パーセントから、鼠径部(腹腔と陰嚢内を結ぶ通路)
に位置している睾丸の腫瘍の50パーセントから、
また、腹部に入ってしまっている睾丸の70パーセントから、
女性ホルモン(エストロゲンまたは卵胞ホルモンともいう)
が分泌されます。女性ホルモンが多く分泌されると、
乳腺が肥大したり、陰茎を包む皮が腫れ上がったり、
局部的に毛が薄くなったり、陰茎が小さくなるなどして
女性的な特徴が強く現れるようになります。
セルトリ細胞腫のある犬は、他の雄犬に性的な魅力を
感じさせる場合もあります。
線維性エプーリス
線維性エプーリスは、犬の口内にできる非癌性(良性)
の組織増殖のうち最もよくみられるものです。
この腫れ物は桃色をした固い組織で、歯肉(歯ぐき)に
できます。良性(非癌性)で非深潤性(まわりの組織を
破壊しない)の増殖であることはいうものの、かなり大きく
なることもあり、ときには1本または複数の歯を完全に
包みこんでしまうことがあります。
増殖部分は炎症を起こして潰瘍化すると、
ものを咬んだときに痛みが生じます。
線維性エプーリスは、8歳以上の犬に最も多くみられます。
前立腺腫瘍
前立腺は膀胱に近い部分の尿道を取り囲んでいるもので、
精液に含まれる液体の大部分がここから分泌されます。
前立腺に腫瘍ができることはあまりありません。
腫瘍の種類には、良性(非癌性)と悪性(癌性)の2種類が
あります。どのような腫瘍についてもいえることですが、
治療を効果的にするにはなにより早期発見が重要です。
悪性の腫瘍は、前立腺の周囲のリンパ節、腎臓、肺に
転移することがしばしばあります。
膀胱に転移することもよくあります。
前立腺腫瘍の原因は判っていません。
組織球腫
組織球腫は、犬には非常に多くみられますが、
猫ではきわめてまれにしかみられません。
この腫瘍は良性(非癌性)の腫瘍で、
年齢の若いペットにできるのが一般的です。
他の犬種に比べて、ボクサー、ダックスフント、
コッカースパニエル、グレートデン、シェットランド・シープドッグ
といった犬種はこの腫瘍になりやすい傾向があります。
組織球腫ができる場所は、通常は頭と顔、
耳と肢に限られます。組織球腫の大きさは、
だいたい直径が2.5センチメートル以下で、ボタンまたは
ドーム型をしており、潰瘍化するのが普通です。
乳頭腫(いぼ)
乳頭腫は、年とった犬の皮膚によくみられる良性の組織の
増殖(いぼ)で、雌よりも雄のほうに多くみられます。
原因は判っていません。このような組織の増殖は1ヵ所
または数ヵ所にでき、普通はあまり大きくありません。
乳頭腫の場合の腫瘍は悪性(癌性)ではなく、
手術をして取り除けば治ります。
なんらかの理由で乳頭腫に何回も傷がつく場合は、
手術をすることをお勧めします。
見た眼にも乳頭腫が好ましくない場合にも、
手術をすることを考えてみるとよいでしょう。
手術をするかどうかは、腫瘍の数、位置、大きさ、
犬の年齢と健康状態などを考慮して決めます。
尿路腫瘍
尿路とは、腎臓から尿管、膀胱、尿道に至る通路のことです。
これらの器官にできる腫瘍は、良性(非癌性)と悪性(癌性)
のものがあります。腫瘍は尿路内部に発生することもありますし、
あるいは体の他の部位にできたものが尿路に転移する場合も
あります。また、逆に尿路内の悪性腫瘍が体の部位に転移する
こともあります。
尿路腫瘍になると、濃い色や血の混じった尿が出たり、
排尿時に苦しがったり、吐いたり、元気がなく落ち込んだり、
腹部が膨らんだりする症状が出ます。
猫の乳腺腫瘍
乳腺腫瘍は、猫にはよくみられる病気で、
その80パーセントが癌(悪性)です。シャム猫の場合は、
他の猫に比べて悪性の乳腺腫瘍になる率が高いことが
判っています。
乳腺腫瘍になる確率が高いのは9歳以上の猫ですが、
生後9カ月くらいの若い猫がかかったという例もあります。
避妊済みの猫が乳腺腫瘍になることは比較的少ないと
いえます。乳腺腫瘍がなぜできるのかはまだよく判って
いませんが、ホルモンの影響によるものではないかと
考えられています。乳腺腫瘍を治療する場合は、
できるだけ早い段階で乳腺および関連するリンパ組続を
手術で取り除くほうが完治する確率は高くなります。
手術で取り除く腫瘍が大きければ大きいほど、
再発や転移が起こる可能性が高くなります。
脾臓の腫瘍
脾臓は、腹腔内にある長く平たい血液・リンパ器官です。
脾臓は、血液を貯蔵したり、新しい血液細胞を作ったり、
古くなった血液細胞を破壊したり、感染に対する抵抗力を
維持するなどの数多くの役割を果たします。
脾臓は重要な器官には違いありませんが、
生命を維持するために欠かせないものではないので、
腫瘍ができた場合には取り除いても構いません。
脾腫瘍では、貧血から腹部の肥大までさまざまな症状を
呈します。脾腫瘍は、ほかの病気のために腹部の手術を
しているときに偶然発見されることがよくあります。
脾腫には、良性(非癌性)と悪性(癌性)の両方があります。
手術で取り出した脾臓の組織の検査を行って、
腫瘍が良性か悪性かを調べておく必要があります。
一部の悪性の腫瘍の場合を除いて、手術後の経過は多くの
ものが良好です。
肥満細胞腫
肥満細胞腫は、犬と猫のどちらにもみられる良性または
悪性の腫瘍です。原因はまだ判っていません。
他の犬種に比べて、ボクサー、ボストンテリア、
イングリッシュブルドッグ、ブルテリア、フォックステリア、
ラブラドルリトリーバー、タックスフント、ワイマラナーなどの
犬種こよくみられます。この病気にかかるのは、
ほとんどの場合が中年の犬です。
肥満細胞腫の形や大きさはさまざまです。
犬の場合は単一の腫瘍のことが多く、
一方、猫の場合は複数の腫瘍がみられるのが普通です。
犬では、この腫瘍は胴体、四肢、肛門の周囲などに
最もよくみられます。また、犬の場合、爪先の間に悪性の
腫瘍が増殖することがよくあります。
副腎腫瘍
副腎は、腎臓の近くにある小さな器官です。
副腎は皮質と髄質という2つの部分からできていて、
皮質と髄質からは数多くの重要な役割を果たす各種の
ホルモンが分泌されます。副腎に腫瘍ができると、
ホルモンの分泌が異常に多くなります。
副腎腫瘍になると、極度の喉の渇き、尿の量の増加、
脱毛、腹部の膨大または垂れ下がり、体力の減退、
全身的健康状態の悪化などの症状がみられます。
これらの一群の症状はクッシング病(または症候群)と
呼ばれています。副腎腫瘍は、癌性でない(良性)場合と
癌性(悪性)の場合があります。癌性の場合は、
予後(病気の経過予測)はあまり好ましくありません。
腫瘍を取り除くことにしたときは、腫瘍になっている組織の
サンプル(生検材料)の病理検査を行って、
その腫瘍が癌性かどうかを調べることになります。
ポリープ
ポリープは、粘膜(器官、管状の臓器、中空の場所をおおう
薄い層)から突き出している組織の塊です。
ポリープは、喉、直腸、膣、膀胱などによくできます。
できるポリープの数は1つのこともありますし、
いくつもできることもあります。また、再発することもあります。
ポリープを治すには、手術をして取り除くのが最も効果的です。
ほとんどのポリープは良性(非癌性)ですが、
悪性(癌性)のポリープができることもあります。
雌の生殖器の腫瘍
新生物とは、「新たに形成される」ものという意味で、
一般には腫瘍と呼んでいます。必ずしもすべての腫瘍が健康に
とって深刻な問題を引き起こすとは限りません。
腫瘍の患者を診断するときにわれわれ獣医師が行なうことの1つは、
その腫瘍が非癌性(良性)か癌性(悪性)かを調べることです。
良性(非癌性)の腫瘍は身体の他の部位には転移しないので、
危険性は少ないといえます。
悪性(癌性)の腫瘍は転移する可能性があり、
非常に危険な腫瘍です。組織のサンプル(生検材料)
を専門医に診てもらうことによって、腫瘍が悪性か良性かを
調べることができます。
卵巣、卵管、子宮、腹に腫瘍ができることはあまりありません。
生殖器に腫瘍ができると、腹腔内に異常な組織の塊が
できたり、月経周期が不規則になったり、膣から異常な分泌があったり、
性器に異常なふくらみが生じたりします。
腫瘍の診断には、身体検査、]線検査、臨床検査、
試験的開腹手術などを行ないます。

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